政経情報研究会 ホーム


【総力取材】選択的夫婦別姓を求める意見書 公開質問

市区議会からの回答に目立つ “言い逃れ”

 対象にしたのは令和元年(2019年4月~)から令和3(2021)年末までに問題の意見書を可決した98の市議会(市会)・区議会(東京都特別区)。回答期限の4月8日までに、郵送とメールで45の議会から回答がありました。

 回答の中には、 [(世論調査の)データ解釈や表記が誤解を招いた」「指摘を真摯に受け止めたい」などと表明したものが少なくありませんでした。

ただ、「(同姓維持を前提とした)旧姓の通称使用を法制化する」としか読めない選択肢を選んだ人(割合)を加えて、『選択的夫婦別姓制度の導入に賛成・容認は66.9%』と結論づけたことの正当性を論理的に説明し、誰をも納得させられるような内容になっている回答はありませんでした。それどころか、「公表されたデータを正確に引用している」「同様の方向性にある選択肢の回答を足した」というような荒っぽい回答もあって困惑せざるを得ませんでした。こうした回答は、令和4年3月に公表された4年ぶりの内閣府世論調査で「選択的夫婦別姓導入」の賛成が3割に満たなかったという厳然たる現実があるだけに、余計に、強引な言い逃れにしか聞こえません。 

「ただちに誤りではない」という“言い訳”

 法務省民事局の担当者は「『何が正しくて、何が間違っている』と評価する立場になく、『これは正しい』という前提があっての世論調査ではない」と明言しており、決して「賛成・容認が66.9%」にお墨付きを与えたものではありません。

 奈良県の大和郡山市議会は、回答の中で、こうした民事局の見解を引用しながら「ご指摘の点について、ただちに誤りであるとは、認識しておりません」としています。なんとも自信なさそうで、“言い訳”にも聞こえますが、これを言い換えると、「絶対正しいとは言えないが、かと言って、ただちに誤りとも言えない」ということでしょうか。 

(大和郡山市議会回答書)
https://shiitani.net/wp-content/uploads/2022/04/■ 大和郡山市議会 4/6 郵送_20220415_0001.pdf

そうであるなら、なぜ同市議会は意見書に「選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に賛成または容認すると答えた国民は 66.9%であり、反対の 29.3%を大きく上回 ったことが明らかになりました」と自信たっぷりに断定して書いたのでしょうか。

(大和郡山市議会 選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた議論を 求める意見書)
https://www.city.yamatokoriyama.lg.jp/material/files/group/46/0309-ikensho04.pdf 

公明党本部の見解をそっくり「回答」に引用した登別市議会

 いただいた回答の中で、北海道の登別市議会は、意見書を提出した議員が所属する公明党本部に見解を訊いて、これを回答として送ってきました。可決した議会の見解ではなく、公明党本部に丸投げして、その見解を“御旗”にしているのですから驚きました。

(登別市議会回答書)
https://shiitani.net/wp-content/uploads/2022/04/■ 登別市議会 4/7 郵送_20220415_0001.pdf

 これによると、「(世論調査は)選択的夫婦別姓制度に賛成か反対かの二択を問うているアンケートであるので、明確に反対と言われているわけでもなく、賛成意見として取り扱うことに問題はない」としていいます。


 世論調査の選択肢はどう見ても「三択」ですが、これを「二択」と決めつけているところが、新しい“解釈”です。仮にそうだとするならば、「同姓維持を前提とした旧姓の通称使用」に賛成した人は、選択的夫婦別姓に賛成・反対のどちらなのか言われれば、「反対」に括(くく)るのは当然でしょう。


 私たちは、議会から見解を求められて、これに答えた公明党を批判するつもりはありません。回答は、「このことから登別としても『選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた議論を求める意見書』は、正当な提出であったと考えております」となっており、繰り返しになりますが、意見書を可決した議会自らの見解を示していないことに失望しています。

回答のあった45市区議会の回答書

No.宛先議会名質問状回答
1茨城県 取手市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
2東京都 東村山市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
3茨城県 龍ヶ崎市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
4東京都 小平市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
5東京都 世田谷区議会事務局御中 区議会議長殿PDFPDF
6東京都 武蔵村山市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
7奈良県 橿原市議会事務局御中  市議会議長殿PDFPDF
8大阪府 交野市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
9東京都 狛江市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
10埼玉県 富士見市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
11大阪府 茨木市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
12埼玉県 志木市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
13京都府 長岡京市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
14千葉県 四街道市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
15兵庫県 岡市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
16北海道 歌志内市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
17北海道 苫小牧市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
18千葉県 市川市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
19北海道 登別市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
20奈良県 大和高田市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
21北海道 函館市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
22北海道 留萌市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
23奈良県 大和郡山市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
24千葉県 佐倉市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
25愛知県 津島市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
26埼玉県 草加市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
27東京都 小金井市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDFPDF
28千葉県 まつど市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
29岐阜県 児市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
30大阪府 藤井寺市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
31東京都 町田市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
32大阪府 吹田市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
33静岡県 伊豆市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
34東京都 葛飾区議会事務局御中 区議会議長殿PDFPDF
35大阪府 松原市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
36東京都 文京区議会事務局御中 区議会議長殿PDFPDFPDF
37北海道 恵庭市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
38東京都 新宿区議会事務局御中 区議会議長殿PDFPDF
39東京都 江戸川区議会事務局御中 区議会議長殿PDFPDF
40大阪府 摂津市議会事務局御中 市議会議長殿 PDFPDF
41岩手県 滝沢市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
42岩手県 北上市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
43大阪府 泉南市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
44東京都 三鷹市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF
45岐阜県 海津市議会事務局御中 市議会議長殿PDFPDF

選択的夫婦別姓 記事一覧

選択的夫婦別姓を求める地方議会「意見書」の“改ざん”を告発する
夫婦同姓を前提とした「通称使用法制化」が、なぜ「選択的夫婦別姓に賛成・容認」なのか?
新たな世論調査結果「選択的夫婦別姓導入28.9%」が示す「意見書可決の根拠破綻」
法務省民事局「いろいろな立場の方から『わかりにくい』の声があった」「過去の選択肢の大枠を踏襲」  法務省民事局の担当者は、取材に対して「これまでの世論調査の選択肢の大枠を踏襲した」「一定程度、これまでの調査を継承して国民の意識を把握できるよ...
全国の市・区議会から質問状に45通の回答
“改ざんデータ”掲載について説得力ある根拠を示せない各議会の回答  政経情報研究会は、平成29(2017)年12月実施の内閣府世論調査「家族の法制に関する世論調査」のデータを、選択的夫婦別姓派が自分たちに都合よく“改ざん”した数字を「意見書...
公開質問状 市議が別姓推進派に情報漏洩 釜石市議会が「厳重注意」
市議が別姓推進派に情報漏洩  私たち政経情報研究会は前記のように、今年2月21日付けで98自治体の議会に公開質問状を送付しました。続いて各質問状が届いたことを確認、3月10日にホームページ上で一斉に公開しました。ところが、驚くことに、私たち...
「同姓維持の通称使用法制化」激増 内閣府世論調査(令和4年3月公表)
今回の世論調査を4年前の前回と比較すると、選択的夫婦別姓導入の賛成は42.5%から28.9%に激減し、同姓を維持した上で通称使用を法制化することに賛成した人は24.4%から42.2%へと大幅に増加しました。また、 1と2を合わせた「夫婦同姓維持」は53.7%から69.2%に増加し、全体の7割を占めました。 

椎谷 哲夫・選択的夫婦別姓に関するメディア掲載過去記事

タイトルとURLをコピーしました