【急告】熊本市が「外国籍も市民」を追加した自治基本条例案の不可解

「反対意見牽制」は越権行為

熊本市が昨年末から行っているパブリックコメント(意見公募)に対し、これに反対する多くの批判が寄せられ、ネット上でも批判が渦巻いています。問題となっているのは同市が今月18日(水)まで公募している「自治基本条例の一部改正(素案)」についてのパブコメです。

「外国籍も市民」を条例に加える必要性はどこに⁉

同市の現行の自治基本条例には、「市民」の定義について、「次のいずれかに該当するもの」として、住民や市内への通勤・通学者、事業者や活動団体などを挙げています。しかし、改正素案では、現行の定義に、新たに「外国の国籍を有するものを含む」との文言を加えました。

市側は「現在でも市民には熊本市に居住する外国人住民も当然含まれる」としています。それなのに、今になって地方自治体の「法律」である条例に、わざわざ「外国籍住民も市民だ」と書き込む必要がどこにあるのでしょうか。その動機を市民が疑うのは当然です。

これについて市側は、海外企業の進出の増加によって「(外国籍の住人が)市民の一員であるとの意識を持つことは自治の推進につながる」などの理由を挙げています。つまり、海外企業の進出を受け入れやすくするための方法として、条例を改正しようとしているのです。住民投票条例に外国人を加えようとして廃案に追い込まれた東京・武蔵野市でさえ、自治基本条例の市民の定義に「外国籍」という文言は入れていません。



■ 問題となっている改正箇所
熊本市自治基本条例の一部改正(素案)概要版より抜粋

(1)第2条第2号の「市民」の定義において、各要件のいずれかに該当すれば、「市民」には外国の国籍を持っている方も含むということを明示する。

【改正理由】
現行の自治基本条例においても、「市民」には熊本市に居住する外国人住民も当然に含まれています。
しかし、熊本市に居住する外国人住民は、海外企業の熊本進出もあり今後も増加が見込まれているところ、そのような方々が 「市民の一 員である」という意識を持つことは、自治の推進につながる重要な要素であるため、分かりやすく明示するよう改正します。


(定義)
第2条 この条例において使用する用語の意義は、次のとおりとします。
(1) 住民 本市の区域内に住所を有する者をいいます。
(2) 市民
ア 住民
イ 本市の区域内に通勤し、又は通学する者
ウ 本市の区域内で事業を営み、又は活動する個人及び法人その他の団体(以下
「事業者、地域団体、市民活動団体等」といいます。)
(3) 市長等 市長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、農業委
員会、固定資産評価審査委員会、公営企業管理者及び消防長をいいます。

熊本市 部外秘の内容を元に「寄せられたパブコメには誤解が多い」

 問題は改正素案の内容だけではありません。パブコメの公募手続きそのものの正当性を疑わせる事態が起こりました。同市は新年が明けた1月5日に、意見公募のHP上にこんな異例の「付記」を載せました。「(2023.1.5追記) 本条例の改正案について、「熊本市では外国人の選挙権を認めるのか?」という旨の質問が多く寄せられておりますが、日本国籍を有しない者に対し、公職選挙法第9条で規定している選挙権を認めるものではありません。また、住民投票の請求権を認めるものでもありません」。

意見公募中に批判的な意見を牽制する追記が掲載された

筆者はパブコメを統括している「地域政策課」の担当者に取材して「付記」を載せた理由を詳しく問い質しました。これに対し担当者はツイッターなどで誤解される内容が発信されているとの認識を示した上で、「パブコメに寄せられた意見にも誤解が多い」と述べたのです。本来は締切り後に明らかにされるべきことを、事前に“漏洩”したのです。

つまり、パブコメで寄せられる意見に誤解が多いので、上記のような「付記」を載せたというのです。

パブコメは「行政手続き法」や「熊本市パブリックコメント(意見公募)制度実施要綱」に則って行われる行政行為です。当然ながら、様々な意見を広く求めて公平に行われるべきものです。しかし、熊本市は「誤解が多い」という理由で、意見公募中にもかかわらず、寄せられた批判的な意見を批判したのです。通常はあり得ないことです。パブコメの修了を待たずに「間違った意見だ」と一方的に断罪したことにもなり、パブコメを市側の思惑通りに進めようという操作だと疑われても仕方がありません。

市民から噴出する「海外企業進出」を理由にした条例改正への違和感

熊本市の改正条例案が市議会で賛成多数で可決されることになれば、どんなことが起きるのでしょうか。熊本市政に詳しい関係者は「地方自治体の法律とも言える条例に書き込まれる意味や重みを考えなければならい」とした上で、「例えば住民投票で外国籍の人を排除した場合、条例を根拠に同じ市民を国籍で差別したとして市側が訴えられる可能性がある。そこまで市側は考えて判断したのでしょうか」と心配しています。

また、「熊本市が条例改正素案の説明に記したように『海外企業の進出』を理由にしたとすれば、本末転倒だ。条例で媚びを売って企業進出を促進しようとしているようにも感じる」と批判します。

さらに、前述の1月5日付けの「付記」についても「集まったパブコメの内容を事前に知る市側の立場を利用しており、違法と言われても仕方がない越権行為であり、断じて許すわけにはいかない。市議会は与野党を問わず、民主的手続きが阻害される危険性について、もっと危機感を持たなければならない」と警鐘を鳴らしています。

条例改正したいなら「外国人参政権は考えない」旨を同じ条例に付記せよ

パブコメには熊本市民だけでなく市外や県外の方も参加するとができます。筆者の元にも、例えば以下のような疑問も続々と寄せられています。熊本市が、こうした意見に応えられないまま、改正案を議会に提出することは決して許されません。どうしても条例改正をしたいのなら、HPではなく、条例の「付則」に「住民投票条例を含む外国人参政権は考えない」ことを明記すべきではないでしょうか。

● なぜ、わざわざ改正するのですか。今でも外国人が市民に含まれるのなら、改正などする必要はないのでは。

● 外国人にも住民投票権を与えることにつながる恐れが出てきます。これは参政権を「国民固有の権利」とした憲法に違反しませんか。

● 市は「外国人に選挙権を与えるものではない」としていますが、参政権の一つである住民投票権を要求されたら断れないのでは。

● パブコメ中なのに、熊本市が改正反対意見派を封殺牽制するような内容をHPに載せることは許されるのですか。行政の政治的中立性をも侵害しているのではないですか。

●「自治の推進」という美名で自治基本条例を改正するのは、外国企業に媚びを売るものではないか。

市外・県外からもパブコメに意見を

熊本市が進めようとしている自治基本条例の改正は、市側がいくら否定しても、外国籍の市民からの「平等な権利」の要求に従わざるを得なくなる恐れがあります。つまり、将来的に「外国人参政権」を認めざるを得なくなるということです。議会がこの条例案を認めれば、他の自治体にも同様の動きが波及する恐れがあります。皆さまには、単に熊本市という一自治体ではなく、日本全体の将来にも関わる問題として捉えていただき、熊本市外や県外の方にも認められているパブコメに意見を述べる権利を行使していただくようお願いします。

パブコメ参加はこちらから
熊本市自治基本条例の一部改正素案(概要版)
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